少しマニアックな話題となりますが、築20年以内の中古戸建てを探している方は該当しますので、是非ご参照ください。
住宅性能表示制度
新築の広告などを見ると、「耐震等級3」とか省エネルギー対策等級「4」などの表記を見ることがあります。この「等級〇」というのが住宅性能表示制度です。住宅性能表示制度は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づいた制度です。国に登録されている第三者機関が、共通基準である「評価方法基準」をもとに住宅を評価する仕組みです。
<参考>一般社団法人 住宅性能評価・表示協会
https://www.hyoukakyoukai.or.jp/seido/index.php
「等級〇」は優良住宅のものさし
住宅性能表示制度は、住宅を10分野で評価する仕組みです。
- 地震などに対する強さ(構造の安定)
- 火災に対する安全性(火災時の安全)
- 柱や土台などの耐久性(劣化の軽減)
- 配管の清掃や補修のしやすさ、更新対策(維持管理・更新への配慮)
- 省エネルギー対策(温熱環境・エネルギー消費量)
- シックハウス対策・換気(空気環境)
- 窓の面積(光・視環境)
- 遮音対策(音環境)
- 高齢者や障害者への配慮(高齢者等への配慮)
- 防犯対策
例えば耐震等級についてですが、耐震等級は3段階に分かれます。
- 耐震等級1と建築基準法は同じ強さです。
- 耐震等級2は耐震等級1の1.25倍の地震に対して抵抗できる強さとなります。
- 耐震等級3は耐震等級1の1.5倍の地震に対して抵抗できる強さとなります。
わかりにくい部分なのですが、等級1の1.25倍、1.5倍の”地震の強さに抵抗”なので、単純に家の強さが1.25倍、1.5倍というわけではありません。
耐力壁の量で言うと、等級2は建築基準法の1.55倍以上の耐力壁が必要で(軽い屋根の場合)、等級3は1.86倍以上の耐力壁が必要となります。※実際には耐力壁の配置や地域によってさらに必要な場合があります。要するに、耐震等級3の家は相当強いと言える訳です。
耐震等級3「相当」という謳い文句
住宅性能表示制度がスタートして、漏れなく制度が利用されたかというと全くそうではありませんでした。当時の事業者は、高い性能を実現するための工事費が高くなる、評価書取得に追加の費用がかかってしまう、というような説明をよくしていたようですが、実際のところは性能表示制度を利用するためのスキームが実務とマッチしていなかったため、不確定要素はなるべく排除したかったというのが本音だと思います。※事実その後に始まった長期優良住宅という制度では、建築に対して補助金が利用できたため、積極的に利用した事業者がたくさんいました。
制度は存在するものの、実際の利用が伴わない…。そんな状況で見られたのが、耐震等級3「相当」という謳い文句です。耐震等級3相当の設計を行っているものの、性能表示制度は利用しなかった物件です。
さて、前置きが長くなったのですが、この耐震等級3「相当」という物件がそろそろ流通市場に出始める頃です。実際に住宅性能評価書を確認してから不動産広告に表示している物件であれば良いのですが、評価書の存在を確認しないまま、売主様の言い分だけで「耐震等級3」と謳っているケースが懸念されます。
住宅性能評価書のある物件は、中古住宅でも様々なメリットがあります。フラット35を利用する場合は新築と同じレベルの金利引き下げが受けられますし、地震保険を利用する場合は保険料が大幅に割引となります。(等級2で30%、等級3で50%)
不動産広告に耐震等級3って記載のある物件は、買主様にとっては「良い物件」と見えますが、実際に取引を進めていくと、いつまで経っても評価書が出てこない、実際には後からそもそも評価書を取得していなかったことが発覚するようなケースが考えられるのです。※2018年4月の改正宅建業法で重要事項説明書の中に住宅性能評価書の有無を記す箇所が追加されていますが、契約時にはいつもの癖で「なし」としてしまう不動産会社もいるようです…。
売主様も当時の事業者に丸め込まれて、耐震等級3相当の設計だから、実際に評価書を取得していなくてもそれほど問題ではないと思い込んでいるケースも考えられます。各種制度でメリットのある住宅性能評価書は新築時に取得していないと後から簡単に発行できるものではないのです。
住宅性能評価は、設計性能評価と建設性能評価があり、実務では、施工時に数回評価機関による現地確認を行わないと評価書が発行されない仕組みです。新築時にそのプロセスを踏まえなかった住宅は、後からやり直しすることができないため、耐震等級3「相当」の住宅は、当時のビルダーが耐震等級3「相当」と言っていただけの普通の住宅となるわけです。※長くなるので割愛しますが、中古住宅の性能表示制度というものもありますが、こちらも現時点では現実的とは言えません。
購入判断材料として「等級〇」を確認した時は、不動産売買契約を締結するまでに、評価書が実在するか確認してもらった方が良いでしょう。