自然と調和した都市景観を守る為の「鎌倉市風致地区条例」。鎌倉市の半分以上が該当する、その制約内容と、それによる不動産活用・売買への影響について解説します。
住まい・暮らしの「かかりつけ医」を目指して。
地元大船・鎌倉に密着して50年以上。
不動産の仲介、管理、相続や運用のサポートを行っている株式会社栄商事です。
歴史的遺産や古い町並みが残る鎌倉市。
また、山あり、海ありの自然豊かな環境も魅力の一つです。
そんな古き良き町と自然の調和、そして人々の暮らしを守るために、鎌倉市では「鎌倉市風致地区条例」が定められています。
この条例は、土地や不動産の利用、活用時に大きく影響するもので、注意が必要です。
今回はこの、鎌倉市風致地区条例について詳しく解説します。
鎌倉市内に土地をお持ちの方、お持ちのご家族から相続の見込みがある、さらには不動産購入を検討されている方も、ぜひご覧下さい。
●鎌倉市内の半分以上を占める風致地区とは?
風致地区とは簡単に言うと、自然、緑の豊かさ、環境保全に特化した町のことです。
そして、鎌倉市では、都市における良好な自然景観を保全し、自然と調和した緑豊かなまちづくりを目的として、風致地区制度が定められました。
現在、鎌倉市には約2,194haの風致地区が指定され、これは市全域の約55.5%を占めています。
尚、風致地区は4つの種別に分かれており、
・第1種風致地区:特に良好な自然環境を有し、その保全を図るため、建築物の建築等を規制する必要がある土地の区域
・第2種風致地区:良好な自然環境を有し、又は周辺に特に良好な自然環境が存し、これらの自然環境と調和した土地利用がされるよう建築物の建築等を規制する必要がある土地の区域
・第3種風致地区:周辺に良好な自然環境を有し、現に存する自然環境又は周辺の良好な自然環境と調和した土地利用がされるよう建築物の建築等を規制する必要がある土地の区域
・第4種風致地区:自然環境の維持若しくは復元が図られ、又は周辺の自然環境と調和した土地利用がされるよう建築物の建築等を規制する必要がある土地の区域であって、第1種風致地区、第2種風致地区及び第3種風致地区以外の区域
以上のようにそれぞれ定義されています。
ただし、鎌倉市には第1種風致地区はありません。
各地区の具体的な場所は鎌倉市の都市計画課ホームページをご覧ください。
●街の景観を守る「鎌倉市風致地区条例」の概要と関連する条例
この条例は平成25年に施行され、その目的は、
風致地区内における建築物の建築、宅地の造成、木竹の伐採その他の行為について必要な規制を行い、もって本市の樹林地又は海若しくは河川等の沿岸部、その他その状況がこれらに類する区域及び ~中略~ 歴史的風土保存区域並びに市街地における風致を維持すること。
とされています。
災害に強く、市民の福祉を高め、環境保全に配慮した安全で快適なまちづくりを実現する
ことを目的とした「まちづくり条例」とはまた少し意味合いが異なります。
どちらかというと、まちづくり条例は極端な都市開発を防ぐもので、
鎌倉市風致地区条例は、自然保護により景観を守るものというイメージです。
いずれも鎌倉市の町並みや環境を守る為の制度ですが、不動産や土地の扱いづらさにも繋がり、売買や活用がされにくい事態にもなっています。
(まちづくり条例について詳しくは別記事「鎌倉市の「まちづくり条例」とは?不動産売買・活用に与える影響を解説」をご覧ください)
●鎌倉市風致地区条例による具体的な規制内容 ~建築物に関して~
風致地区に該当するエリア内で建築物の建築をするには、条例により様々な制約があります。
まず大前提として、建築物の位置や形態、色、材質などが周辺と調和することが必要です。
それに加え、それぞれの種別ごとに、以下の基準に適合しなければいけません。
1.建築物の高さ制限
建物の高さに上限を設定し、ある程度揃えることで、見晴らしが保たれます。
第2種風致地区:8mまで
第3種風致地区:10mまで
第4種風致地区:15mまで
2.建ぺい率の制限
建ぺい率とは、敷地面積に対する、建物の建築面積の割合のこと。
風致地区では、その種別により建ぺい率に制限を設けることで、建物が密集することを防ぎます。
第2種風致地区:10分の2
第3種風致地区:10分の4
第4種風致地区:10分の4
3.壁面後退距離の制約
壁面後退距離とは、建築物の外壁から敷地の境界線(道路または隣接地)までの距離のこと。
建ぺい率に似ていますが、道路や隣近所との距離を一定以上開けることで、密集を防ぎます。
また、道路に面する部分と、それ以外の部分とで距離の規定が異なります。
<道路に面する部分>
第2種~第4種風致地区:1.5m
<それ以外の部分>
第2種~第4種風致地区:1m
緑化率とは、敷地面積に対する緑化地(木竹が保全され、又は適切な植栽が行われる土地)の面積の割合を指します。
一定の割合で緑を確保することで、自然と調和した町の景観が保たれます。
第2種~第4種風致地区:20%
風致地区では、建築物に関することだけでも、以上のような制約があります。
尚、緑化率に関しては、敷地内に木竹が無い場合には植栽を行うことが求められます。
それも、 高木、中木、低木、生垣等が一体となって良好な自然的環境を形成するよう、バランスのよい植栽計画とすること。とされています。
なかなかハードルが高いですよね。
●風致地区内の不動産相続、売買や活用はプロにご相談を
風致地区の制約内容、いかがでしたか?結構がんじがらめですよね。
それも、不動産に詳しくないと分かりづらい項目が多く、そのほとんどに計測・測量が必要。
手続きや申請も要るとなると、面倒ばかりです。
ただ、厳しい規制があることで美しい景観が保たれているとも言え、風格や由緒ある高級住宅地となっているところもあります。
うまく活用できれば、自然と利便性を兼ね備えた理想的な暮らしができたり、優良物件として高値で売れたり、お店や宿泊所としての利用価値も出てくるでしょう。
もし、風致地区内の不動産を持っているが持て余している方、相続の予定がある方、購入したいと考えている方がいらっしゃいましたら、まずはぜひご相談下さい。
制約のことなど難しいことはプロにお任せいただき、お客様のご要望もお聞きしながら、より良い活用や売買の方法をご提案します。
●まとめ
鎌倉市風致地区条例とは、自然と調和した都市を目指すために定められた制度。
街の景観を保つために設けられましたが、不動産の活用においてはかなりの制約があります。
一般の方が制度をすべて理解し、その上でうまく活用することはかなり困難でしょう。
それでも、厳しい制約の上で成り立つ都市の不動産は、使い方次第でとても価値が上がるポテンシャルを秘めています。
もし、風致地区内の不動産を持っている、あるいは相続する、購入する場合は、ぜひとも当社へご相談下さい。
地元鎌倉に密着して50年以上の経験と知識から、その有効活用法や売却方法をご提案させていただきます。
どうぞお気軽にお問い合わせ下さい。