古い分譲住宅地が点在する鎌倉市に多く残る「大谷石積み擁壁」には要注意!そもそも擁壁や大谷石とは何か?その影響と事例、解決法について解説します。

住まい・暮らしの「かかりつけ医」を目指して。

地元大船・鎌倉に密着して50年以上。

不動産の仲介、管理、相続や運用のサポートを行っている株式会社栄商事です。

みなさんは、石やコンクリートが積まれた上に家が建ち、段々になっているような住宅地を見たことがありませんか?

石やコンクリートを積むのは斜面が崩れるのを防ぐためで、「擁壁(ようへき)」と呼ばれます。

擁壁は自身の家を守るだけでなく、周辺の家を巻き込んでしまわないためにも重要で、もしもその対策が不十分なために他者へ損害を与えてしまった場合、過失を問われる場合も。

そして、こうした家の作り方は開発地、分譲住宅地に多く見られ、鎌倉市内にも点在します。

ところが、既存の擁壁の中には、今の建築基準だと耐久面で不適格とされるものがあります。

代表的なのは大谷石(おおやいし)積みの擁壁。

該当する物件は、売買時や建設時に色々と制限や問題が出てくるのです。

そして、この大谷石積みの擁壁というのが、鎌倉では特に多いとされています。

今回は、そんな擁壁の重要性と、大谷石積みの場合の問題と解決法についてお話します。

●擁壁(ようへき)とはどのようなもの?

擁壁とは、斜面の土が崩れるのを防ぐために設置される壁状の構造物です。

高低差のある土地では、土そのものや建物の重さに加え、雨水の水圧もかかり、がけ崩れが起きるリスクがあります。

そして、万が一がけ崩れ等が起きた場合、通行人や近隣の建物にも影響を及ぼす可能性があるため、擁壁の耐久性は非常に重要な問題です。

法律として明記されてはいませんが、擁壁のある土地を所有する人には、擁壁の維持管理責任があるとされています。

例えば地震等で擁壁が崩壊し、そのがれきが近隣の家に流れて被害が出た場合、崩壊した擁壁のある土地の所有者が損害賠償責任を負うことになります。

このようなリスクやトラブルを回避するためにも、建築基準法で、一定の耐久性を確保することが定められているのです。

鎌倉市内に限らず、擁壁のある物件を購入する際には、擁壁の耐久性の確認や、地盤調査の実施などを行うことをおすすめします。

●大谷石(おおやいし)とは?

大谷石は軽石凝灰岩の一種で、軽くて軟らかいため比較的加工がしやすく、さらに耐火性に優れた石材。

その特徴から、昔から外壁や土蔵の建材などにも使用され、日本人にとっては馴染み深い素材です。

大谷石積み擁壁とは、この大谷石を積み上げて造られた擁壁のことです。

特に1960年代には、多孔質の独特な風合いからくる高級感が人気で、多くの擁壁に用いられました。

ところがこの大谷石、多孔質ゆえに、風雨に晒される野外では劣化が早く、耐久性には少々難あり。

今では、大谷石積み擁壁は建築基準法で不適格とされるため、建て替えなどの対策が必要とされています。

最近はコンクリートかブロックの擁壁が多いでしょう。

ところが、昭和40年~50年代にかけて、鎌倉市内各所(津、今泉台、西鎌倉など)で大規模な開発が行われ、多くの分譲住宅にこの大谷石積み擁壁が使われました。

その頃の擁壁のままの物件もまだまだ多く残っているのです。

●擁壁が大谷石だとどのような問題が?

前述のとおり、大谷石積み擁壁の物件は今の建築基準法を満たしていない場合がほとんど。

当時のままの状態で住み続ける分には問題ないのですが、建て替えや売却をしたい場合には問題が出てきます。

例えば、今建っている建物を一度壊して新たに建てる場合。

大谷石積み擁壁のままだと、その土の荷重(土圧)と、雨水などの水圧、さらに建物の荷重を考慮した上で、今の建築基準で問題のないサイズの建物しか建てることができません。

前の家のように土地の広さギリギリまで建てると、擁壁が崩れるリスクが高いのです。

つまり、新たに建てる家は、土地に対してかなり小さなものしか建てられない、ということになります。

あるいは、その土地の広さを有効活用するには、大谷石積み擁壁を一度壊し、今の建築基準を満たす擁壁に作り変える必要があります。

いずれにせよ、制限やコストがかかることになるのです。

●事例と解決方法

最近問題となった事例を紹介します。

鎌倉市内の物件購入を検討されているお客様がいたのですが、その物件の擁壁が、大谷石+ブロック塀でした。

このお客様は、もともと売り主と直接価格交渉・取引をしようとしていましたが、売買契約のために当社に相談に来られたことで、当該物件の擁壁に大谷石が使われていることが発覚。

ただ、売り主、買い主ともに、この擁壁の問題を知りませんでした。

今そのまま物件に住む分には問題ありませんが、将来、再建築や増築、売却をする際には影響があります。

不適合擁壁ということになった場合、擁壁工事を含めた費用負担が発生。

物件そのものの価格に擁壁工事費を加えるとかなりの出費になります。

そこで、このような物件を売却する場合の多くは、工事分などを考慮し価格を安くします。

買う側も、そうした制限や問題を理解した上で購入しなければいけません。

今回のケースでは両者とも認識がなかった為、そのまま売買が成立しても、後々になってトラブルになった可能性があります。

互いに理解、納得をされた上での売買をされた方が良いのでは、ということと、確定測量をしましょうというご提案をさせていただきました。

多くの方が、擁壁や大谷石のことを知りません。

すでにある家を建て替える際は、当然、同じサイズの建物を建てられると思うでしょう。

あるいは、擁壁を作り直す必要があるなど想像もつかないかと思います。

しかし、鎌倉市内には、このような物件は多く存在します。

鎌倉の物件の購入を検討される方や、不動産を相続される見込みのある方は、ぜひ一度、我々のような専門家にご相談下さい。

●解決方法は?

この問題の解決策としては、擁壁を作り直すか、建物を移動するしかありません。

大谷石の擁壁を一旦取り壊し、コンクリートなど耐久性の高い素材で作り直せば、建物のサイズ等は、新しい擁壁の耐久性の範囲内で自由に建築可能です。

あとは、土地に余裕があるならば、建物を再建築や増築する際、崖となる部分から重心を離す方法もあります。

建物を斜面から離れたところに移すだけでも、擁壁にかかる圧力はかなり変わります。

とはいえ、いずれの方法もなかなかの費用がかかります。

必ず物件購入前に擁壁適合の確認を行うことをおすすめします。

不適合擁壁の場合は購入しないか、コストを回収できるだけの充分な活用法を検討するなど、充分に見極めた上で購入を検討された方が良いでしょう。

そのためにも、不動産のプロに相談するのが一番良いかと思います。

●まとめ

古い大規模開発地が点在する鎌倉には、大谷石積み擁壁がたくさんあります。

しかし、大谷石は耐久面で、現在の建築基準を満たしていません。

売買や建て替えをする際には、様々な制約や問題が発生します。

知らずに損をしてはもったいないですよね。

購入前、あるいは相続時など、鎌倉市内の物件の売買前にはぜひ、擁壁適合の確認を行っていただきたいと思います。

そして、不適合擁壁の場合は検討し直すか、もしくはプロにご相談いただき、解決策や活用法を

提案することも可能。

栄商事は、地元鎌倉に密着して50年以上の知識と経験があります。

鎌倉市内の不動産売買や土地活用のご提案ならお任せください。

売買だけでなく仲介、管理、活用、相続など、不動産に関するご相談なら何でも受け付けております。

どうぞお気軽にお問い合わせ下さい。